「おはようございま~す!!」
元気良く、明るく、挨拶をして事務所に入っていった。
「・・・・・・・・」
所長に挨拶をしたんだが、返事が返ってこない・・・それどころか、口をあけて呆然としてこっちの方を見ている。
「も~・・・所長~!!どうしたんですか~・・・ちゃ~んと挨拶したのに、その顔は何ですか?」
(なんだか、昨日までの雅憲君ではなく女っぽくなったみたいだけど・・・髪型でそう思うのか?なんだ・・・この違和感は・・・)
「えっ・・・あ・・・・いや~・・・いつもと違うから・・・なんだか朝からテンションが高いな~って・・・いつもは、目の下にくまを作って、こすりながらモゴモゴと言って入ってくるじゃないか~・・・いったい何があったんだ?」
いつもの雰囲気と違う雅憲を見て、あっけに取られながら聞いた。
「うふふ・・・昨日良い事があったんですよ~!!」
「?」
(やっぱり何か、雰囲気と言うか・・・違う?・・・何だろう・・・髪型以外に、何かが・・・)
ルンルン気分で自分の席に座って仕事の準備に取り掛かる雅憲・・・
「今日で、この世が終わるかも・・・」
あまりの変わりように、一言呟く所長、
「えっ?何がですか?・・・この世が終わるって?」
「あっ・・・いや~・・・ただの独り言だから気にしなくていいよ・・・」
聞こえないように、ボソッと呟いたつもりだったが、聞こえていたらしい・・・
しかし、いつもだったら、こう答えると、文句の一つや二つ帰ってくるのだが・・・
「♪~♪~♪~」
鼻歌交じりでその事に触れず、仕事をしている。今日は、非常に機嫌がいいらしい・・・
(昨日、何か良い事があったんだな・・・まっいいか~・・・)
そう思い、気にせず資料の整理に入った。
この事を深く気にしなかった為に、彼の今後の人生までもが変わる事になるとは・・・
「うっ・・・う~ん・・・・」
窓から日が差し、眩しさで目を覚ました。しかし、いつもならまた寝入ってしまうが、今日は・・・
(・・・・・・あれ?なんだか、いつもと違う目覚め・・・・身体も軽いし・・・・やっぱり、あの装置の効果は凄いんだわ・・・でも・・・・何だか変な感覚の様な・・・・・ん~・・・気のせいかな~?)
「よいしょっと・・・・」
ベットの布団をたたみ、冷蔵庫を開き自分で料理をし、朝食を済ませた。
(朝食ってこんなに美味しい物だったなんて・・・これも伊集院さんのおかげよね!!)
いつもなら起きてそのまま洗面を済ませ、食事もせずに出かけてしまうが、何故か勝手に身体が動いてしまう・・・・しかももの凄く軽く・・・
「あっ!!そう言えば今の何時って?」
手を伸ばして、時計を見る・・・
「えっ?やだ~・・・もうこんな時間?・・・早く出かける支度しないと・・・」
遅れないように慌てる雅憲だったが、昨日の装置によっての異変にはまだ気が付いていなかった・・・
「よし・・・これで・・・あっ!!やだ~髪の毛、髪の毛・・・セットしてなかったわ~・・・」
(あれ?あたしの髪の毛ってこんなに長かったかな~?・・・気のせいよね・・・)
なんだか不思議な気持ちになったが、時間を気にして慌てて、くしを使って整える。
「うん!!変わりなんて無い!!気のせいだ!!」
違和感を感じ不安になったが、何でもないと自分に言い聞かせ、出かける仕度をする。
「さぁ~て・・・今日もあの装置を・・・あ~あ~・・・仕事行くの面倒くさいな~・・・休んじゃおうかしら~・・・」
バタン!!ガチャン・・・
「ダメダメ・・・サボるのは良くないわ!!行かないと!」
雅憲の住んでいるアパートから法律事務所までは徒歩で15分もかからない場所にあり、
事務所までは、徒歩で通っている。
(あ~・・・なんだろ~・・・こんなに身体が軽いなんて~・・・所長にも、紹介・・・あっ!!この事は言っちゃ~駄目だったんだ・・・ふふふ♪)
途中途中、思考が男女入れ替わる事があったが、当の本人は、まったく気が付かなかった。
その頃、伊集院邸では・・・
プルルルル・・・・・・プルルルルルルル・・・・・
「お久しぶりね・・・・聞きたい事があるんだけど・・・・・いいかしら?」
携帯電話を片手に怪しい笑みをして話す伊集院、
「・・・・・・・・はい・・・・なんでしょうか?」
「ふふふ・・・・この前、貴女が言っていた、女人化薬の事なんだけど・・・・もう使えるかしら・・・・?」
「はい!!勿論~、今直ぐにでも使えますわ!!臨床実験の結果も全て出揃いましたので、資料と一緒にお持ちしましょうか?」
そう、彼女は伊集院が自衛軍に送り込ませた女医で、伊集院から頼まれていた女人化薬の研究開発を堂々と駐屯地内の医務室でやっていた。勿論、試薬の犠牲になったのは、言うまでもないが・・・
「そうね~・・・・どうしようかしら~・・・・」
「ふふふ・・・・そう言えば、あの7人の内の一人に、この薬を投与いたしましたので、彼女に持たせましょうか?薬の効果とこの子の出来具合を見て頂きたいと思いまして・・・」
「そう~・・・そう言えば以前、7人以外にも、他に試す事が出来るモルモットがいるって言っていなかったかしら~?」
「そっ、それが・・・ですね~・・・・女人化はしたんですが~・・・」
「ふ~ん~・・・・そ~ぉ~・・・女人化はしたの~・・・・で?・・・・」
「え~っと~・・・・色々と試すうちに、性欲だけ異常に・・・」
「ふふふ・・・・そ~ぉ・・・・で、今はその彼女はどうしているのかしら・・・」
「研究室のモルモット保管場所の奥で前後の穴に大きな電動の栓をして管理しています・・・」
「そう・・・・だったら、今度のオークションにそのモルモットも出品しましょう・・・・」
「えっ?よろしいのですか?・・・・・あんな失敗作を出品してしまったら、伊集院様の名前に傷を付けてしまう様な気が・・・」
「ふふふ・・・・・普通の子を欲しがるだけじゃ~ないのよ」
はい・・・分かりました・・・すみません・・・新薬の方は完璧ですので・・・一度ご覧下されば・・・」
「ふふふ・・・そうね~・・・・可愛い子になったかしら~ふふふ・・・楽しみね~・・・良いわ!!そうしましょ・・・」
「分かりましたわ!!もし・・・伊集院様が、お気に入りになれば彼女も差し上げますわ!!・・・・」
「ふふふ・・・・そうね~・・・一度遊んでみようかしら・・・・」
「ふふっ・・・ええ~そうして下さい・・・・こちらも結構大勢の女人化候補が誕生しましたわ!!」
「楽しんでいるみたいね・・・」
「ええ~・・・これも、伊集院様のおかげですわ~♪」
「ふふふ・・・・では・・・これで・・・また、後で日時と場所を連絡するわ・・・」
「はい~お願いしますわ~♪」
ピッ!!
(ふふふ・・・・飲み薬の女人化薬・・・完成したのね・・・・ふふっ・・・明日から・・・・楽しみね・・・・覚悟しておきなさい・・・)
「ええ・・・・後は~・・・・ふふっ・・・そうだわ!!勉強が捗る様に、普段のお食事にも気を付けないといけないわね!!・・・・」
「しょ・・・食事・・・・ですか?・・・・・」
「ええ・・・貴女・・・いつもは、どうしているのかしら?」
「え~っと~・・・朝昼は兼用で~、いつも事務所の近くにあるコンビニで先生の分と一緒に買いに行っています・・・・」
「そ~ぉ~・・・・ふふふ・・・だったら、私が知っている配達弁当屋を紹介してあげますわ!!」
(ふふふ・・・・あの弁護士の分も彼が買っているのなら・・・・クスクス・・・これは良いチャンスね・・・)
「えっ・・・で、でも~・・・・」
無料で能力何とかの装置を使用させてくれて、尚且つ食事の面倒までは、悪いような気がして、困った表情をするが、
「ふふふ・・・気になさらなくてもいいのよ・・・御代はきちんと頂くから・・・ビジネス、ビジネスなの・・・だから本当に気にしなくていいのよ・・・それに、お値段も手ごろで決まった時間に配達してくれるわ!!」
「は~ぁ・・・・」
「ふふふ・・・私の紹介だから、割引もあると思うわ!!」
彼らの生活状態や考え方を徹底的に調査しており、値段が安ければ注文すると言うことが分かっていた伊集院は、割引の言葉を出すと、案の定食いついた。
「そっ・・・そうなんですか!!」
「ええ~・・・この前、紹介した人に聞きましたら、一食あたり数百円程度って言っていましたわ!!」
頭の中で、毎日買っている弁当の値段を思い出して、
「数百円・・・・・だったら・・・・コンビニより安いかも・・・・」
「ふふふ、明日から頼んでおくから、良いわね?」
「あっ・・・はい・・・お願いします・・・」
「ふふふ・・・・・・」
(単純な子ね・・・・これから、どんどんと賢い子に変えていってあげるわ・・・ふふふ・・・そしたら・・・)
「あっ!!・・・・・」
ふと、時計を目にして驚く雅憲。
「どうしました?」
「もう・・・こんな時間なんですね・・・・こんなに長居してしまうとは・・・すみません・・・あたしは、これで・・・失礼します・・・」
「ふふふ・・・・そうですわね・・・・自宅にお送りいたしますわ!」
(ふふふ・・・効果が出始めてきたみたいね・・・ふふっ・・・良いわよ~憲子ちゃん・・・)
「おっ・・・お願いします・・・」
「彩!!」
「はい、どうされましたか?伊集院様・・・」
彩の返事が、伊集院の座っている椅子の後ろの方から聞こえた。
「そろそろ、彼がお帰りになるから、仕度を・・・・」
「Y E S S A !!」
ギーィィィィィ・・・バタン・・・・
そう言い、車を用意しに部屋の外へ出て行った。
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・アパート近く・・・・
バタン!!
「いや~・・・今日は、本当にありがとう!!ここまでリラックスできるとは思わなかったわ!!」
「ふふふ・・・良いのよ、これぐらいの事!!これも仕事だから!!」
「えっ?そうなの・・・・」
ここまでやってくれたのが、自分に好意を持ったからだと思っていた雅憲は少し残念な表情をしていた。
「ええ、そうよ!!それに~・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
色々な事を想像してしまい、少しの間沈黙が続いた後、彩に見つめられているのに気が付き、心の中でモヤモヤが発生して、どうしようか分からなくなって、
場が悪くなった様な感じになった雅憲は、逃げるように別れの挨拶をした。
「じ、・・・じゃあ・・・あたし・・・これで・・・・」
「ええ・・・じゃあ、また明日迎えに来るわね!!あのお店で待ってて・・・、」
「えっ・・・あ・・・う、うん・・・分かったわ!・・・・・あっ!!そうだ、明日も多分、今日と同じ時間帯に終われると思うわ・・・・」
「ふふっ・・・・分かったわ!!じゃあその時間に来るわね!!」
(ふふふ・・・あの装置の効果が効いてきているみたいね・・・ホント、鈍感な子・・・話し方が、所々女言葉になっているのにも気が付かないなんて・・・ふふっ・・・ま~ぁ~、これがあの装置の特徴なんだけど・・・・短時間で繰り返し使えば、もう元に戻る事は・・・・クスッ!!)
そう言い、二人は分かれた。
「あ~・・・やっぱり~・・・少し、汗をかいちゃったみたいだから、ベタベタしてるのよね~・・・さ~て、アパートに戻ってシャワー浴びて寝よっ♪ふふふ・・・♪」
いつもは、数日間風呂に入らなくても気にならなく、遅くなるとすぐに寝てしまうのに、何故か今日だけは、このベタベタが非常に気になって、シャワーを浴びなければ寝れる気がしなかった。
その後、寝るまで雅憲は今日の事を思い出し、
(くすっ!!明日もあの装置に・・・うふふ・・・楽しみだわ~・・・♪♪♪~)
明日の事を考えながら、ルンルン気分で眠りに入った。
伊集院によって少しずつ女人化され、話し方や思考や仕草までもが変わってしまった事に、まったく気が付く事無く・・・
彩に連れられて、伊集院の待つ食堂へ行き、簡単な装置の感想やテストの報告をする。
「あら~・・・そんなに良かったの~・・・ふふふ・・・そんなに気に入ったのなら、これから毎日でも試すといいわ・・・ふふふ・・・」
「えっ!!ほ、本当ですか~!!は、はい!!お言葉に甘えて、これから試験まで出来る限り毎日受けさせていただきます!その代わり、何だってやりますから!!」
思わず伊集院に、「何でもやる」と、とんでもない事を言ってしまった・・・
この後どうなる運命なのか知らないのに・・・
(ふふっ・・・そう・・・何でも・・・何でもね・・・覚えておくわ・・・ふふふ・・・どちらにせよ、やってもらうけどね・・・)
パンパン!!
伊集院が手を叩くと、後ろの方で待機していた数名のメイドが料理をもって来た。
「そろそろ、お腹もすいている頃でしょ?頂きましょうかしら?」
「あっ、は、はい・・・じゃあ・・・い、頂きます・・・」
椅子に座ると、メイン以外の料理が一品ずつテーブルに運ばれてきた。
(うわ~・・・こんな食事・・・生まれて始めてだ~・・・・・・・ん?・・・・そう言えば~・・・ここにいいるメイド・・・何かおかしい様な?・・・・ん~・・・まっ・・・気のせいか~・・・・)
カチャ・カチャ・カチャ・カチャ・カチャ・カチャ・カチャ・カチャ・カチャ
「で・・・どうでした?簡単な感想は先程お聞きいたしましたが、詳しく聞きたくて・・・」
食事している手を休めて雅憲の目を見て質問する伊集院。
「えっ?・・・あっ・・・あの装置ですか?・・・ホントあれは凄いです!!まさか模試であの点数が取れるとは・・・」
豪勢な食事に、模試の良い出来に満足げな表情で答えた。
「ふふふ・・・試験までの間、毎日かかれば確実に合格できますわ!!」
「そっ・・・そうですね!!・・・これからもお願いします!!」
「ふふふ・・・良いですわよ!!仕事の終わる時間さえ教えていただければ、お迎えに参りますわよ!!」
「えっ?そっ、そこまでしていただいても良いんですか~?」
「ええ~・・・ただし、この装置の事と、私達の事やこの施設の話は口外しないでくださいね!!」
「はっ・・・・はい!!勿論!!口外なんてしません!!」
「ふふふ、後、この装置はまだ実験段階なの・・・・だからもしかしたら、副作用が出るかもしれないから、毎日このお薬を飲んで欲しいの・・・」
伊集院の横にいたメイドが白い紙袋に入った薬をテーブルの真ん中に置いた。
「こ・・・この薬ですか?・・・・・」
薬まで飲まなければならないと聞き、少し不安になったが、
「ええ・・・・別にたいした薬ではないわよ・・・・一応、頭の記憶をいじっているから、脳波を安定させる為の安定剤よ・・・飲まなくても後遺症が出なければ良いけど、もし、後遺症が出て、試験までの間にあの装置を受けられなくなっては困るでしょ?ふふふ・・・・」
「あ・・・は~ぁ・・・・」
「ふふふ・・・・このお薬は、別に何もない時に飲んでも影響は無いわ!!だから安心して下さいね・・・」
「わかりました・・・これを毎日飲めばいいんですね!!」
伊集院に異常は無いと言う説明を完全に信用して、安心して薬を受け取ってしまった。
この薬が何だったのか知った時には、もう・・・