試験後、初出勤すると、いつもの様に忙しそうにしている所長がいた。
「おはようございま~す!!」
「お~お!!おはよう!!その声からして、試験の手応えは良いみたいだね!!」
「はい、おかげさまで、何とか出来ました!!」
「そ~か~、そ~か~・・・・じゃあ、合格発表日までが待ち通しいね~」
「試験前の時間の速さとはまったく違って、物凄く遅く感じられますよ~」
「うんうん、自分の時は駄目だと思ってたからな~・・・それでも合格発表日までの期間はとんでもなく長く感じたからな~・・・手応えがあればなおさらだね~・・・」
ドサッ!!
両手に抱え込んでいた資料を机に置いていく河西弁護士
「あっ!!僕も手伝います!!」
「ん?じゃあお願い!!あのダンボールに入っている資料を付箋紙の番号順に纏めたいから・・・・」
「分かりました!!」
試験勉強で休む前と変わらない日々が、始まったかの様に思えた・・・
月日が過ぎるにつれ、時々記憶が飛ぶような気なして、あの装置での副作用なのかと不安になった事もあった。
雇い主である河西弁護士は相変わらず忙しく、ここ数日間、事務所に戻らない日が続いた。
(所長も大変だよな~・・・あたしも弱者救済が出来る弁護士になれるのかな~・・・でも~、そう言えば最近、あの弁当を食べる様になってからなのか、痩せていたはずの河西弁護士の体型がふっくらとしてきている様な・・・・)
気のせいなのか、イメージチェンジしているのか、中途半端に伸びた髪の毛が非常に気になった・・・
(なんだか最近の所長の様子も・・・おかしいわ~・・・すっきりした感じだったのに・・・ん~・・・なんだろ~・・・何が変わったのかしら~・・・)
毎日配達される弁当には微量ではあるが女人化薬が入っており、本人達が気が付かない程度に女人化が進んでいた。
試験当日
駅から試験会場に繋がる道には、大勢の受験生が列を作っていた。
「○○スクールでーす・・・頑張って下さーい!!」
「○○ゼミです・・・どうぞ!!」
各予備校が予想論点が記載された用紙とパンフレットが入った袋を受験生に配っている。
「どうぞ!!」
雅憲にも手渡されたが、そのまま何も見ずに鞄にしまった。
(あの装置のおかげで今回は大丈夫なんだから・・・こんな物見なくても・・・)
試験会場に着き、指定された部屋に入っていく・・・
そこでも、必死に参考書を読んでいたり、六法を開いて確認する受験生達・・・
ひしひしと押しつぶされそうな雰囲気の会場だったが、雅憲は、何も見ずに筆記具と時計の用意と、受験票を出してボーっとしていた。
(頑張ってる、頑張ってる・・・うふふ・・・今回は焦らなくても大丈夫!!ホント、伊集院様のおかげね・・・これであたしは・・・)
他の受験生の様子を眺めている雅憲。
他の受験生からしてみれば、確実に不合格リストに上がっている人物になっているだろうが・・・
(あれ?そう言えば・・・さっき、あたしって言ったような・・・ん~何だか懐かしいような・・・何でだろう・・・男なのに・・・あたしって思うと懐かしいなんて・・・)
脳内女人化された後、元に戻されているが、完全とは言えずかすかに女人化の影響が残っていた。ただ、本人の知らないところで・・・
しばらくして、試験が開始された。
すらすらと解ける問題、自分の意思と言うか手が勝手に動いている様で、論文がらすらと・・・・
その後に行われた口述試験も難なく終わらせることが出来、最終合格発表まで待つこととなった。
能力開発装置設置部屋
カチャカチャ・・・・
今日も、忙しそうに必死で働いている女人化された隊員達
「最終設定準備は出来たかしら?」
伊集院が今の状況を隊員達に聞いた。
「はい!!今すぐにでも出来ます!!」
「ふふふ・・・そう・・・分かったわ・・・」
ガチャッ!!ガチャッ!!
今日は、伊集院自ら雅憲が座っている椅子の固定ベルトを取り付けている。
「今日で、能力開発の工程はお終いになるわ・・・今回で最終だから、一気に仕上げるから、もしかしたら終わった後、少し頭が重くなる事があるかもしれないけど、すぐに治るから心配しなくてもいいわ・・・」
「はい!!・・・これで、あたし・・・本当に合格出来るんですね!!」
目をウルウルとさせ、嬉しそうに伊集院に話す憲子
「ええ~・・・必ず合格できるわ・・・じゃあ、始めるから目を閉じてゆっくり眠りなさい・・・」
そう言われ、伊集院に催眠術をかけられてしまったかの様に、そのまま寝てしまった。
「ふふふ・・・・少しの間お休みしててね・・・憲子ちゃん・・・」
ぐっすりと寝ている雅憲の頬を触って微笑みながら話しかける伊集院
「始めてちょうだい!!」
「YEYESSA!!」
カチッ!!ブウンンンン~・・・・・・
最終調整のための脳内改造が始まった。
試験に合格する為の作業工程はここに来て数回の間に終わってしまい、殆どが脳内女人化の為の作業工程であった。
脳内女人化だけでなく、食事には微量ではあったが例の女人化薬も薄めて入れられていた。
その為、体つきは男と言えば男だが、女に近い体つきになっていた。
ただ髪型は、毛は長くしなやかになって、ふんわりウェーブの効いたミディアムボブになっていた。
「髪型は・・・仕方がないわね・・・少し短くしましょう・・・また時期が来れば伸びるし・・・後、ここに来た時の服を用意してちょうだい!!」
隣にいた彩少尉に頼み、身体の方をどうやって誤魔化そうか考えていた。
「はい、かしこまりました。」
彩は伊集院に頼まれ、敬礼をしてその場を離れていった。
(あ~ぁ~・・・なんて気持ちがいいのかしら~・・・今日もいつもと同じで身体が軽く・・・・ふわふわと・・・あれ?・・・何だろう・・・何か・・・何かおかしい様な・・・・なんであたし・・・あれ?あ・・あた・・・違う!!お・・・お・・・・・俺、なんで女言葉になってるんだろう・・・・・・・)
「脳波の様子はどうかしら?」
「はい!!順調に入れ替わり作業が進んでいます。」
「そう・・・少しの間我慢してちょうだいね・・・憲子ちゃん・・・元に戻って、貴女は雇い主である、あの弁護士を追い詰めるようにするの・・・いいわね・・・ふふふ・・・」
雅憲に向かって怪しい微笑をしながら言い聞かせるように話す伊集院。
(何をいっているのだろう・・・誰かが・・・俺に話かけて・・・)
「まもなく、最終工程終了します!!」
「分かったわ!!」
プシュー・・・
装置につけてあるコードやエアーホースが外され頭の上にある装置も離れていく。
椅子に座っている雅憲を、隊員達が持ち上げ横にあるベットに移し着替えをさせる。
その後、伊集院が女人化した事が気付かれない様に、髪型を元に戻す為カットし始めた。
(あ~・・・もったいないわ~・・・これだけ綺麗で長くなった髪の毛・・・でも仕方ないわね・・・この格好で戻ったらこの作戦も無駄になってしまうから・・・少しの間だけのお別れね・・・憲子ちゃん・・・)
「う~ん~・・・・」
背伸びをし目を開くと、伊集院と彩が雅憲の顔を覗き込んでいた。
「ど~ぉ?清々しい目覚めでしょ~・・・試験の方もこれで必ず合格出来る様になってるわよ!!」
手を握られ、微笑みながら話しかける彩の顔を見て赤くなる雅憲
(ふふふ・・・この様子じゃ~女人化の事まったく覚えていないみたいね・・・)
「雅憲さん・・・どうだっかしら?私の開発した装置は・・・」
「ん~・・・試験を受けていないからまだ何ともいえませんが、この装置を使ってから物凄く身体が軽くなり、考え方が変わったような気が・・・」
「そうですか~・・・ふふふ・・・試験に合格した時には、またお願いしますね・・・」
「はい!!勿論、何でもやらさせて頂きますよ!!」
伊集院のお願いが、この装置についてのモニターの感想関係だと思った雅憲は、軽いのりで言ってしまった。
「そ~ぉ~・・・なんでも~・・・・ふふふ・・・・」
女人化後の姿を思い浮かべているのか?冷たい表情で笑う伊集院・・・
コン、コン!!
「いいわよ、入りなさい。」
「はい、失礼します・・・」
ノックをし、部屋に入って来たのはミルダだった。
「どうしたの?」
「伊集院様、雅憲君を連れて行く準備が出来ました!!」
「あら、もうそんな時間だったかしら・・・ふふふ・・・じゃあ~またいずれゆっくりとしたお話でもしましょう・・・」
「あっ、はい・・・そ、そうですね・・・・・その時は、またお願いしますね・・・じゃあ、ありがとうございました。」
ここで、脳内女人化をされた事を知らない雅憲は、また、機会があればあの女人化装置を使わせてもらおうと伊集院にお願いするとともに、深々と頭を下げお礼を言って外に出て行った。
数日が過ぎ、ついに最終調整の日が来た。
コン・コン・・・・
いつもと同じ様にメイドが食事の支度が出来た事を知らせに来た。
ここに来て最初のうちは、このノックで起こされていたが、昨日からその前に目が覚め起きて準備をしていた。
「はぁ~い!!」
「憲子さん・・・お食事のご用意が・・・」
「あっ、はい!!ありがとうございます!!今行きます!!」
「かしこまりました・・・」
そう言い、メイドは食堂へ戻っていく。
(さて・・・着替えも済んだし・・・後は~お化粧ね・・・)
フリフリドレスを着て、化粧台の椅子に座り、軽くファンデーションを塗り、薄い色の口紅を・・・・
カチャッ!!
「おはようございます、伊集院様!!」
元気良く伊集院に挨拶をする。
その姿を見て、怪しい笑みをこぼし足元から全身を確認し、挨拶をした。
「ふふふ、おはよう!!今日も可愛いわよ・・・憲子・・・」
「えっ!!そっ・・・そんな~・・・いっ、伊集院様に言われるなんて・・・・」
顔を赤らめ、両手を頬に当てて喜ぶ憲子、女人化してしまった事に気が付いていないと言うか、元々自分は女だったと思ってしまっていた。
(ふふふ・・・・すっかり女人化したわね・・・・今日は最終調整よ・・・・これで・・・)
楽しそうに食事をする雅憲を見て、話しかけるミルダ
「ふふっ・・・調子良さそうね・・・・」
「はい!!もう・・・なんて言うか・・・頭がすっきりした上に、身体の調子も・・・・」
あの装置によって快調になっている上に、日頃食べる事が出来ない豪華な食事を出され、ご機嫌な雅憲。
「ふふっ・・・今日からは一日3回・・・・だから、後2回あるわよ・・・・どうかしら?あの装置の感想は・・・」
怪しい笑みをこぼし雅憲の心境を聞いた。
「えっ?あ・・・あの装置ですか~?・・・・ん~・・・・」
なんだか言いたい事があるのに言い出せない様子の雅憲
「何かしら?・・・何んでも言ってもらわないと・・・貴女はこの為にいるのよ・・・タダで三食も付いて部屋まで・・・それに、試験に合格できるだけの能力も手に入れられるのよ!!実験段階だからと言ったって少しぐらいの手間賃も・・・それをモニターだからタダにしているのよ!!何でも気になった事は言ってもらわないと、こっちが困るのよ・・・」
雅憲を言葉で甚振りながら攻めていくミルダ中尉
「は、はははは・・・きっついな~・・・そっ・・・そうですよね~・・・ん~・・・・」
頭を片手でかきながら、恥ずかしそうに装置にかかっている時の事を思い出している雅憲、
(ふふっ、思い出したみたいね・・・そうそう・・・もっともっと思い出しなさい・・・ふふふ・・・)
その様子を見て楽しんでいるミルダ中尉
(ふふっ・・・・そのうちにその恥ずかしさも無くなるわよ・・・・髪型や胸やお尻が少し変わったのを気が付かないように・・・・)
二日目にして、雅憲の髪の毛は、また少し伸びホンワリとし、先程の女人化薬によって胸が少しふっくらとし、お尻は丸みが出ていていた。また、所々の仕草が女っぽくなっていたが、まったく気が付いていなかった。
「えっと~・・・さっきもなんですが・・・あたしが女になっている夢をまた・・・・何故か女子高生になっている夢をみたんですよ・・・あたし・・・男なのに・・・」
(・・・・・・さすが・・・伊集院様ね・・・たった二回目でここまでの効果を出すなんて・・・・しかも・・・あたし・・って・・・クックック・・・)
「そう・・・女の子になった夢を・・・・多分色々な記憶装置にかかって多少混乱したのかしら・・・・プログラムのミスで脳内が女性化したのかしら?」
「えっ?・・・・そしたら・・・あたし・・・・このまま女に・・・」
「くすくす・・・・冗談、冗談よ!!色々な情報が入ったから混乱しているだけ、これぐらいの事は起きると想定していたから・・・・」
「そっ・・・そうなんですか・・・」
「ええ~・・・・多分、昨日も今日も、判例を記憶しているから・・・特に女性が被害にあった犯罪で出された判例と事件内容も記憶させたからだと思うわ!!」
それを聞いて、胸に手を当て、ほっとしている雅憲
「よかった~・・・・昨日も見て・・・そして今日までも・・・もしかしたらあたし・・・心のどこかで女になりたいのかと・・・・よかった~・・・そうじゃなくて・・・」
「ふふふ・・・・そうね・・・・」
カチャッ!!
「そろそろ二回目の準備が整いました・・・・」
装置の操作をしている女性が来てミルダに報告した。
「そう・・・・わかったわ・・・・そろそろ行くわ・・・すぐにできるように準備していて・・・・」
「はい・・・・かしこまりました・・・・」
そう言い、準備が出来た事を報告しに来た女性は、お辞儀をし、部屋を出て行った。
「さて・・・・食事の方はもういいかしら?」
「はい・・・ごちそうさまでした・・・」
「じゃあ、行きましょうか・・・・」
プシューーーーーー
「お疲れ様・・・今日はこれでおしまいよ!!」
「・・・・・はい・・・・・ありがとうございます・・・・」
一日に3回も脳内改造をされた為か?終わっても、まだ何だか頭がぼんやりとしていた・・・
少し時間が達、頭の方もすっきりとした所で、帰ってきた伊集院と食事を取り、自分に宛がわれた部屋に戻った。
(ふ~・・・今日も、終わったか~・・・試験まで後数日・・・これなら・・・・さて・・・着替えて寝よ・・・)
衣服をしまってある箪笥を開け、パジャマを探す・・・・
そこには、男性用と女性用の物が二種類用意されてあった。
(そう言えば、昨日は・・・なんであたし・・・女性用を?・・・でも・・・・こっちの方が可愛いわ・・・・わ~・・・丁度あたしに合うサイズだし・・・・素敵だわ!!・・・誰にも見られるわけでもないし・・・・ふふふっ・・・)
自分の姿を想像しながら、楽しそうに女性用のパジャマを手にし、着替えてベットに入り、何やら布団の中でコソコソとし始めた・・・・・
(・・・ご想像にお任せします・・・)
そして、いつの間にか寝てしまった・・・