その頃、隊長は・・・
「ハー、ハー、ハー、・・・・少し走っただけで息切れしてしまうなんて・・・やっぱりこの身体では・・・・早く元に戻って・・・え~っと、次は・・・こっちね!!」
地下通路を走っては休み、また走っては休むその繰り返しをしながら駐屯地へ向かっている。この通路は下水道を利用している為、迷路状になっており思い出しながら進んでいた。
パシャパシャ!!パシャパシャ!!パシャパシャ!!パシャパシャ!!
遠くの方から、誰かが走ってくる様な音が聞こえた。しかも一人だけではなく大勢で・・・
「誰?・・・ここには誰もいないはず・・・もしかして下水工事で???そんな事は・・・それにしてもこの人数だと・・・」
通路の曲がり角で隠れながら左右を確認しながら進んでいく隊長。段々と水を弾く音が近づいてきている。
「誰・・・なの?・・・もしかして追っ手なの?・・・どうしよう・・・・」
ついに追っ手がきたと思って隠れならが考えていると、ふと制服の上着のポケットに護身用の拳銃が入っていた。
「これって・・・ちゃんと弾も入っているわ!これなら・・・」
拳銃を手にし、下水溝に繋がる方へ身を隠し攻撃の機会を探していた。伊集院の策略とも知らずに・・・
「おい!!こっちの方で誰かいるような気が・・・」
「どこだ!!こっちか?どこへ逃げ込んだ!!出て来い!!」
大きな声を張り上げ二人一組に何って捜査をしている刑務隊員達。その声が聞こえ驚く隊長。
「誰か駐屯地から逃げたって?・・・・誰かが、ここに逃げ込んだの?・・・・そうだわ!!きっと私が逃げたから駐屯地まで調べに行って見つかったんだわ!!ふふっ、何てドジをした人なんでしょ~・・・今の私の状況を説明すれば・・・・でも、こんな格好で会うなんて・・・・何も言わずに会えば攻撃されるし・・・・どうしよう・・・・うん、彼らなら分かってくれる、きっと分かってもらえるわ!!」
そう自分に言い聞かせ、両手を上げて彼らの方へ向って行く隊長。
「撃たないで!!あたしは、対テロ特殊部隊の隊長の三陸よ!!認識番号はG*******今朝例の組織に突入して捕まって、こんな風にされて・・・・仲間もまだあそこに・・・ね~お願い助けて・・・」
拳銃を持ったまま、両手を挙げ、大きな声で身元を言いながら刑務隊の隊員がいる方へ歩いていく隊長だったが・・・・
「おい!!止まれ!!それ以上近寄るな!!前に来るな!!動くな!!」
ライトと小銃をこっちに向け確認する隊員。そして、無線機を取り
「犯人を発見!!至急応援を!!報告通りの制服に、片手には拳銃を所持!!発砲の許可を!!」
隊員が無線で確認を取ると思ってもいない返答が返ってきた。
「ちっ違うわ!!あたしよ!あたし!!分からないの!!犯人って何よ!!」
案の定、外見が分かっていた為、犯人と間違われ銃口を向けられてしまった貴博、
犯人と間違えられた事より、同僚に本人だと分かってもらえなかった事が物凄くショックだった。
「犯人と確認できれば発砲を許可する!生存は構わない、早急にサンプルの回収を優先せよ!!」
本部からの返答が聞こえ、さらにパニックを起す貴博、
「了解!!」
無線が切れると同時に、小銃の銃口から火が吹いた!!
タ・タ・ターン・・・タ・タ・ターン・・・タ・タ・ターン・・・
「えっ!!嘘!!なんで?あたしよ!!あたし!!分からないの!!貴方達も知っているでしょ!!特警隊の事件を!!私も彼らと同じ事に・・・・きゃっ!!」
タ・タ・ターン・・・タ・タ・ターン・・・タ・タ・ターン・・・
「おい!!どうだ!!当たったか?」
「いや、分からん・・・どっちが見に行く・・・」
「俺はいやだ!!お前行けよ・・・先に言った方が見に行くのがお決まりだろ・・・」
「俺も・・・・嫌だ・・・だってあいつら、女人化の薬を持ってるんだろ!!俺は女になるなんて嫌だからな!!」
隊員達が言い合っている隙に網目状になっている下水道へ逃げ込んだ。
(つづく)
ガサガサッ!!
「誰!!」
音がした方向に振り向き鋭い眼光で睨みつけると、刑務隊の隊員が驚いた顔で医務官の顔を覗いていた・・・
「どっどうしたんですか・・・三佐・・・・だ、大丈夫で・・・・」
「えっ、ええ~・・・も~脅かさないで下さい!!急に音がしたので、先程の件もあり・・・・もう怖くて怖くて、身が凍る気がしましたわ・・・・」
「すみません、三佐を脅かすつもりは無かったのですが・・・・で・・・・モルモットって何です?モルモットになる実験材料がいなくなったんですか?・・・何か他に亡くなった物でも有ったんですか?」
「えっ!!ええ・・・モルモット・・・は勘違いしていたわ・・・でも、実は・・・・大変な事に女人化を戻す為のサンプルが・・・・・」
「えっ!!あのサンプルが・・・・確かあれは前回の事件で人形化した特警隊の隊員を元に戻せる可能性が有るって言われていた、あのサンプルですよね・・・・でも何でサンプルを???」
荒らされた研究室の周りを見渡しながら、不思議に思いながら何かを探している隊員。
「私の憶測ですけど、犯人はこれを盗んだと言う事は、あの指名手配の組織に間違いないと思うの!!元に戻される薬が出来て困る組織なんて、あそこしか・・・あっ!!そうだ・・・そう言えば黒いロングコートにあの組織の制服を着ていた様な気がします。お願い!!早く!早く見つけて!!あれを早く保管庫へ戻さないと・・・常温だと細胞が壊れるのよ!
早く取り戻して!!あれが無いと今までの研究が・・・早くあのサンプルを取り戻して!!」
これ以上、研究室を詮索されると粗が出そうなので、目を潤わせながら必死に訴えているふりをして、隊員に言い寄る格好をして研究室の外へ押して一緒に出ていった。
「わっ・・・分かりました・・・早く見つけて取り戻しますから、その~服を引っ張るのは・・・苦しくて・・・」
「あっ!!・・・ごっごめんなさい・・・あのサンプルは今までで一番良い出来だった物なんです・・・・保存状況が悪ければ・・・・本当にごめんなさい・・・つい、今までの苦労を思い出して・・・・すみませんがよろしくお願いします。」
顔をそらし、ハンカチで涙を拭き目を赤くして、今一度取り戻してもらうようお願いした。
「はい!!我々にお任せください!!必ず取り戻してみせますから!!」
そう言って、外にいる突入する小隊へ戻った。
医務官の心の中では・・・
「ふふっ!!なんて単純なのかしら・・・・今から攻撃をしようしている相手がまさか、あの隊長さんだなんて・・・ふふっ面白いことになってきたわ~・・・
さて・・・データーの収集をしないといけないわね!!隊長さんも驚くでしょうね!!仲間だと思っていた隊員に攻撃されるなんて・・・」
刑務隊が地下通路に突入したところを確認して、研究室へ通路内の様子を見に戻っていった。
(つづく)
その頃駐屯地では
あの女医が電話をしていた。その相手は勿論伊集院であり何かの報告を受けていた。
「ふふ、分かりましたわ!!今回は我慢しますわ・・・・」
ピィ!!
「ふふっ、そろそろ来る頃ね!!いったいどんな風に女人化しているのかしら・・・」
医務室の奥にある女医専用の研究室へ行き、モニターの電源を入れた。
「う~ん・・・ここのカメラには~・・・え~っと・・・ここには~いない・・・・あっ!!いた、いた!!ふふふ、結構可愛いじゃない!!え~っとこのカメラの位置は?・・・ふふっ、もうここまで来てたんだ!!じゃあ始めましょうね!!」
そう言い、敵が侵入し何かを盗んだかのように見せる為、室内にある棚等を倒し始めた。
ガシャーン!!ガシャーン!!ガシャーン!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ふ~・・・こんな物でいいかしら・・・ふふふ、後は~・・・・」
そう言い、医務室に戻って貴博が出て来る通路の出口を開け、メスを取りだし腕を少し切った。
「痛っ!!」
メスを投げ捨て、切り口から血が流れ出し出血を止めようと、もう片方の手で傷口を塞いで医務室の外に出て大声で叫んだ。
「キャー!!助けてー!!誰かー!!キャー助けてー・・・」
しばらくすると、その声を聞きつけた隊員達が慌てて向かってきた。
「どうしました?何があったんですか?三佐・・・・こっ・・・これは・・・大丈夫ですか?・・・直ぐに手当てをしないと・・・・医務室まで歩けますか?」
「ええ、大丈夫よ・・・ごめんなさい・・・・誰かが医務室にいたので、声を掛けたら急に・・・・」
「もう安心してください!!我々がいますから。」
そう言い、医務室へ戻ると
「えっ・・・・何?・・・何これ・・・・嘘!!私の研究室が・・・・あっ!!まさか・・・・あのデーターが・・・・」
腕を押さえながら研究室へ走って行き、入ったところで座り込んだ。
「嘘・・・・何これ・・・・」
医務官の後を追ってきた隊員が荒らされた研究室を見て
「これは・・・・酷い・・・・ですが落ち着いて下さい。・・・・・まず手当の方をしないと・・・」
「え、ええ・・・」
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「一先ず、これで大丈夫だと・・・」
「ええ・・・ありがとうございます。・・・・」
身体を小刻みに震わせている様に見せかけ、包帯で巻かれた腕を見つめ何かを思い出したかのように立ち上がった。
「あっ!!そう言えば・・・・」
医務官が急に立ち上がって大きな声を出した為驚く隊員。
「どっどうしました!!」
「ええ・・・そう言えば、私を切った犯人が逃げ込んだ場所を見たんです!!」
「ええ!!じゃあ、すぐに刑務に知らせないと!!」
そういい携帯を取り出し電話を掛ける。
「あっ!!**中隊の**2曹ですが、先程、医務室で医務官が襲われ被害が・・・その犯人は未だ逃走中です。今すぐ・・・」
要件だけ言い、電話を切ろうとした時に合わせ、犯人の情報を思い出したかの様に、
「待って!!そう言えば、犯人は拳銃の様な物を手にしていた様な気が・・・・」
「あっ!!後、三佐が言うには、敵は拳銃を所持している模様です!!」
電話の向こうでは直ぐに対応がされ、現場を確認する為に武装した隊員がこっちへ来ると言っていた。
「もうすぐ刑務が来ますから安心してください!!すぐに犯人も捕まることでしょう!!で・・・その~・・・・」
「はい?何でしょう?」
「いっ、いえ~あのですね・・・・出来れば・・・・危ないと思うので・・・・三佐の携帯電話番号を・・・・」
「ふふふ、まぁ~、なんて冗談が好きなお方なんでしょうかしら?別に私のき携帯電話の番号じゃなくても良いじゃないかしら?」
「がっはっはっ~・・・そっ、そりゃ~そうですよね~・・・ははは、は~・・・・やっぱ~無理か・・・」
頭をかきながら断られた恥ずかしさを笑ってごまかし、何かを呟きながら医務室の外へ出て行ってしまった。
「ふふっ、そんなに落ち込まなくても、貴方には私の研究用モルモットとして有効利用させてもらいますから・・・・ふふふ」
不敵な笑みをこぼし、この先の事を頭の中で想像しながら呟く医務官だった。
(つづく)
その頃逃走中の貴博は・・・・・
「そう言えば、真一の治療法方を研究して対処法を見つけたとか何とかって言ってた医務官がいわよね・・・・確か~どこかの研究所にいて、あの事件が発生し作戦部隊を創設したときに呼んだんだっけ・・・・女だから信用できないって・・・・あの時は言ってしまったんだけど・・・・」
危険を冒してまで行こうとしている目的の場所と言うは、今朝出発した駐屯地内にある医務室で、そこには、作戦部隊を創設した後に自ら志願してこの作戦に協力すると言って今までの仕事を辞めてまで協力すると言った女医が任官し、そこで例の事件の犠牲者の二人についての何らかの対処法を発見し、ワクチンの開発している。
その事を思い出し、もしかしてこの身体も治ると思い、助けてもらおうと彼女の元へ向かっている。
駐屯地に地近づくにつれ、今日に限って何故か厳重な警戒態勢で見回りの隊員達が多い様に思えた。
この姿で会う事だけは避けたい為、見つからない様に隠れながら中に入るには、ある通路から駐屯地内に入るしかなかった。ただ、その通路は数名の者しか知らない為、もし出口付近で見つかれば攻撃される危険性もあった。それよりも、女人化されてしまった身体や顔を仲間に見られたくなかった・・・。
「やっぱり、やめようかしら・・・こんな姿じゃ~恥ずかしいわ!!・・・でも~・・・」
そう言い、車のサイドミラーでもう一度見直して、
「・・・あたし・・・女っぽいかしら・・・」
話し方や仕草までが自然に女ぽくなってしまう・・・
しかも、今まで「私」と言っていたのが、「あたし」に変わっいる事にも気が付いていなかった。
「駄目よ!!こんなこと考えてたら・・・行動しなくちゃ!!」
そ言って、隠し通路のある下水溝に入るため、マンホールの蓋をパイプのような物でずらし始めた。
ゴロゴロ、ゴロゴロ、ゴロゴロ・・・・
女人化の影響なのか?蓋が重く感じ、なかなか動かすことが出来ない。
「う~ん・・・・こんなに重かったのかな~・・・・これも・・・・・でも、早く退かさないと・・・・」
体つきや顔まで変えられてしまった上に、体力までもが・・・・そう思うと、この先本当に男に戻れるのだろうかと不安になる・・・・その不安を頭を振って振り払い必死に重い蓋を横にずらそうと・・・・そうこうしている間に、身体が入るだけの隙間が出来た。
「よし!!これで駐屯地に!!ふふふ、あたし、やっと元の姿に・・・・みんな待ってて、すぐに・・・・きゃっ!!」
ドサッ!!
ヒールであった為、梯子を踏み外し落下したしまった。
「痛った~・・・・も~最悪・・・・でも何でこの服破れないのかしら・・・・それよりも、見つからない様に早く行かなきゃ!!」
そう言って、駐屯地内の出口に向かって通路を歩き始める。
(つづく)
その頃伊集院は・・・・
「ふふふ、私の思った通りに動いてくれるなって・・・・単純な子・・・・でもそれが良いのよね・・・そろそろ準備の連絡してあげないと・・・」
そう言い、ある所へ電話を掛けた。
プルルルルル・プルルルルル・プルル、カチャ!!
「はい、***師団****です。」
「あっ!!私、伊集院と申しますが、今からあなた方の駐屯地に対して宣戦布告をいたします。これは冗談じゃないわ!!今日、あなた達がいる駐屯地内の一つの部隊がこちらにお邪魔しに来たのですが、これはもう大変な事をして下さって、私物凄く感激していますの!!そのお礼といっては何ですが、あなた達の駐屯地を消して差し上げようかと・・・・」
「あっ、あの~・・・・悪戯は困るのですが・・・・・・・・これ以上の悪戯は刑務隊に報告・・・」
「ふふふ、冗談じゃ~ないわ!!そうだ!!だったら今日来たお客さんの認識番号をお教えしましょうか?あの首に付けてたタグで分かりましたから・・・・」
「え???何ですって?・・・・認識???・・・」
「ふふふ、上級職から言うわ!!階級 一佐 氏名 三陸 貴博 認識番号G******* ニ佐 大空一洋 認識番号G*******・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「おっ!おい!!確か、例の部隊のジャケットのコピー有ったよな!!早く持ってきてくれ!!」
電話の向こうでは、慌てて照合作業をしようとしている隊員達の表情が伝わってくる。
「ふふふ、お分かりいたしましたか?なんなら、もう一度お伝えいたしましょうか?ふふふ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
電話の向こうでは、未だに照合作業が・・・
「あっ!!指令・・・この認識番号は・・・・この番号も・・・・」
「嘘だろ・・・あの部隊が・・・・じゃあ・・・・この電話は・・・・」
焦る様子が、電話越しから聞こえてくる声で伝わってくる。
「あっ・・・・あの~・・・・で・・・・一体なんのご用件で・・・・」
「ふふふ、さっきも言ったでしょ!!あなた記憶力悪いのかしら?ふふっ、ま~いいわ、もう一度だけ言うわね!!あなたのいる駐屯地を消してあげるの、ただそれだけ・・・今一人私の一番信用できる部下をそっちに送り込んだわ!!あなた達の情報を得る為に侵入するわね!!良かったら阻止してみなさいね!!じゃあ切るわね!!」
「あっ!!ちょっと、まっ」
ガチャッ!!
不敵な笑みをし、携帯電話を取り出し電話を掛けた。
「ふふ、そっちの状況はどうかしら?まだ変わった様子はない?」
「はい、こっちの様子はいつもと変わらず平和ボケしていますわ!!」
「ふ~ん、そう!!ふふ、もうそろそろそっちに荷物が行くわ!!そろそろ始めても良い頃よ!!」
「分かりましたわ!!でも、残念ですわ・・・・女人化作業に参加できないなんて・・・」
「ふふふ、今回は我慢しなさい!!今度は、あなたにも沢山やらしてあげるから・・・・」
「ふふ、分かりましたわ!!じゃあ今回は我慢しますわ・・・・」
そう言って電話が切れた。
「ふふふ、これであの駐屯地は確実に大騒ぎになるわね!!ネズミ一匹近づけない様に外周警戒も強化されるはずよ!!後は、あの子次第・・・・・ふふふ、そんな事になっているとは知らないで戻るなんて・・・・ふふふ・・・・」
(つづく)